心観じる
観心寺 住職 永島全教氏 聞き手/遊びプロデューサー 宝楽陸寛氏

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河内長野のフィールドで、「土地処ならでは」を知ってもらえるか。これが「奥河内を面白がる」ウエブサイトの核となるコンセプト。記念すべき初回の特集は、観心寺の住職、永島全教氏と、「文化財を利活用して、生活実感に近い体験の領 域を増やしていきたい」遊びプロデューサーの宝楽氏が、文化財のたのしみ方に ついて語りあいました。

 

宝楽氏 : すでにある河内長野のあたりまえには、親しみがなかったり、日常の延長線上で失われたものがあったり、例えば、昔の人がよく食べた茶粥や、米粉を 「観心寺粉」と呼んでいたことなど、改めて再発見し、再編集して発信していこう!という活動を、昨年から取り組んでいます。そこで、いよいよ文化財ででき ることを考えていきたいな、と。毎月のお経を読む会とか、もうすでに成立して いるものもたくさんあると思うのですが、そこから繰り出される地域の人との会話や、お寺で過ごすこの静かな空気、そのなかで感じられるものを届けたいんです。
 

永島氏 : 宝楽くんのような若い世代に、そう思ってもらえてうれしいですね。
 

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枠にとらわれず、ご縁を大切に

 

宝楽氏 : 僕自身、観心寺さんに思い入れが深く、父の納骨堂があることもあって、 「結婚式をここで挙げさせてほしい」とお願いした時に、あたたかく受け入れて もらいました。最近では文化財ライトアップ「観心寺 奥河内の灯里」など、お 寺で開かれるイベントが増えていて、わりと間口を広げてもらえているように感じるのですが。

 
永島氏 : 「間口を広げる」部分でいうと、仏さんへの窓口になるのが我々の仕事 なので、きちんと仏さんの声を理解し、ご縁を広げていくこと大事にしています。 受信をして音をだす、受信することがおろそかになって音ばかりを広げようと すると、人が増えても 3 代持たない。このことを真摯に考えながら、ただ本当に 仏さんから「OK」と聞こえるまで動かないと思っていたら、自分の枠にとどま ってしまうので、先方からお話しがあれば「それもご縁かな」と、なるだけお受 けするようにしています。正直、実施してみて違うと感じることもあるのですが、 投げてみないとどんな波紋になるかわからない。願い事でも初めから決めつけてしまうとダメで、「ほんとうはもっと用意しているのに、それでいいの?」と なる。願いはこうだけど、あとはお任せします、それが「南無」に込められた意 味なんです。ご縁があったらお任せしよう、ということで今の流れになっています。
 
宝楽くんが「結婚式をしたい」と申し出てくれたこともご縁があってのこと。 先方からのお話しにはなるべく乗ろうと思っています。

 

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ハードとソフトが両方備わる場所

 

宝楽氏 : 先日、僕たちの仲間で運営している「奥河内観光大使」も観心寺さんで実 施させていただき、子どもたちと一緒に訪れさせていただきました。僕らぐらいの世代になった時に、お寺にいく理由って例えば、お正月、お花見、厄除。昔は そこで暮らしている人にとって、お寺はもっと身近で日常生活の中心にあった イメージなんです。遊び場であったり、手を合わせたり。

 

永島氏 : そうでしたね。昔は子どもたちがお寺の絵を描く、遊ぶという風景はよくあ りました。今、30・40 代の方が来られる機会としては厄除が一番多いのですが、 文化財の見学、お花見にしても、いろんな目的をもっておかえり頂いた時に、心落ち着かせて、手を合わせて気持ちをラクする。その延長に極楽があります。ど ういうカタチであっても関わりをもってくれた方に、落ち着いてもう一歩踏み 込んでいただけるなら、ご縁はウエルカムです。
 
宝楽氏 : ほんと、観心寺さんにきて手を合わせることの魅力、ここの空気が好きって いう方はたくさんいらっしゃると思うんです。国宝建造物(金堂)でなかに国宝(如意輪観音菩薩)があるっていたって珍しい。重要文化財としてのハードと、心を落ち着かせるソフトウエアが両方備わっている観心寺さんを、僕はソフト ウエア(心)の部分でフューチャーしたいな、と。
 
永島氏 : そうですか。弘法大師さんがつけた寺の由来でもある「心観じる」は大事な テーマだし、如意輪観音さんを中心に、北斗七星塚を祀っているところも重要な要素です。
 
宝楽氏 : その「心観じる」という部分が、ソフトウエアに着目しているというか、みんなは仏像に手を合わせにいくというのが、一般的なイメージのなかで、御開 帳の日以外は、如意輪観音さんの扉はしまっている。見えるものに価値を見出がちな現代に、見えない仏さんに手を合わせる「そこが面白い!」って、純粋に。扉が閉まっていても、心で通じあえているんだ。
 
永島氏 : もともとは通じているんですよ。一生懸命拝んだところで、仏像の姿カタチ、イメージさせているものが本体。本来は心で通じあえるんだけど、みんな心が小さくなって固まって汚してしまっているので、だから落ち着いてもらうことで心が洗われて、気持ちいいなと思える。
 
宝楽氏 : そうなんですよ、僕にとってはすごく落ち着くんです。
 
永島氏 : その落ち着くような空気感、場所を維持しているところが寺や神社なんですよね。ただ受け手もその準備がないと。荒れている畑に種をまいても意味がないので、うちの場合だと北斗七星塚をまわってから、本堂に座ってもらったり、手を合わせる時に呼吸を意識してもらったり。頭と心をつなぐのは呼吸なので、腹 式呼吸を。手を合わせた時に、ため込んだものを吐き出してから、鼻からゆっくりすって、腹式ができたら、必ずいつもより落ち着くんです。落ち着いてもらう 時間をつくってもらわないと、心に雲がかかってしまう。落ち着く努力をしてく れたら、光が照らされて、さらに任せきったらひろがりができる。心の奥からの働きかけで、自分の固まった考えや心がほぐされてかなり楽になる。少し畑を耕してから種をまいたほうが、芽がでやすいということです。

 

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体験がある、歩いてこそ見える「観心寺」

 

宝楽氏 : 実は、僕が好きな瞬間は、観心寺さんに向かう道中だったりします。畑が荒れているかな(笑)。なかにはいると、やっぱり星塚が好きなんです。

 
永島氏 : 北斗七星塚は、立体の七星如意輪マンダラとして仏の世界を1つの山に あらわしていて、すごく珍しい。金堂と鬼子母神さん南の端、まっすぐ線をひっぱり南に伸ばすと、高野山につながっていく。
 
宝楽氏 : 星塚にしても、体験がある、歩いてこそ見える「観心寺」って、あるんじゃないかな。あと、今とっても気になっているのが、「観心寺粉」なんです。米 粉をまたの名を観心寺粉と呼んでいたことを書籍で知って。いろいろ調べてい くうちに、こちらに御陵がある後村上天皇に食べてもらえるように、練って丸め てお団子になっていたことを知りました。日常の延長線上に失われたものの一つだな、と。こんなに眠っていて、わりと知られていない。「奥河内」やっぱりすごいなって。
 
永島氏 : 「奥河内」でくくると仏教的にもすごいんですよ。最初に仏教がはいったのが明日香村、そこからみて阿弥陀の極楽って西の方角は、太陽が沈んでいく極楽 の方角が、河内なので。1300 年前に仏教が根付いている。日本に仏教が入ってきた頃、極楽のイメージがこのエリアなんです。
 
宝楽氏 : いいですね、極楽のイメージ「奥河内」。
 
永島氏 : その「奥河内」で活躍していたといえば、役行者、弘法大師、楠木正成、みんな同じ流れのなかにいる。「興味あるカタチで流れに入ってもらえるお手伝いができたら」とお寺としてはそう思っています。文化財を見学するだけではなく 活用していく、旧慎本院の子院(重要文化財)も、江戸中期のお台所がキレイに残っています。
 
宝楽氏 : 観心寺粉のワークショップや、精進料理を作ってみようとか広がりますね。
 
永島氏 : 最終的に心を観じる働きだったら、自分が想像できないような広がりが生まれますよ。